こんにちは。有限会社メタルテクノササキの渡辺です。
今回は、当社が取り組んできた「切削液切り替えプロジェクト」についてお話しします。
これは製品紹介ではなく、「現場での活動報告」としての記録です。
入社当初の現場の状況


私が入社した当時、工場では 不水溶性切削油 を使用していました。
- 工場内は油煙でもくもく
- 機械はベタベタ
- 床は滑りやすく危険
さらに深刻だったのは 社員の手荒れ。
多くの社員が皮膚科に通院しており、私自身も手の甲や指が赤くただれ、ステロイド軟膏を常用。
二重手袋で防御しても改善せず、作業性は悪化…。
この「環境と健康」の両面を改善する必要性を強く感じました。
水溶性切削液への挑戦
そこで着目したのが「水溶性切削液」。
しかし当初は社長やベテラン社員から猛反対を受けました。
「ステンレス加工には潤滑性が必須だから水溶性は合わない」
「すぐ腐って工場が臭くなる」
確かに当時は ステンレス加工100%。靭性が強いため潤滑性が重要とされ、水溶性は敬遠されていました。
それでも私は諦めず、各メーカーの切削油を取り寄せ、濃度を変えながら何十パターンもテストしました。
試行錯誤と失敗の連続
テストでは数え切れないほどの失敗がありました。
- 品質は良いが、においが強すぎて社員が咳き込む
- 塩素入り製品で、自分自身が気分が悪くなり倒れ込んだ
- ベタつきがひどく、製品同士がくっつく
- 機械内部に切り屑や汚れが張り付き、メンテナンス性が悪化
- 加工の仕上がりが悪い
点数をつけると どの製品も30〜50点程度。
「どこかが良ければ、どこかがダメ」という状況が続き、1年以上切り替えできない状態でした。
理想の切削液との出会い
そんな中、インターネットで偶然見つけたある水溶性切削液に注目。
即座に問い合わせ、代表者と直接やり取りし、エマルション・ソリュブル・ ソリューションのサンプルを入手しました。
水溶性切削液には基本以下の3種類があります。
- エマルション – 鉱物油メインで乳白色になり潤滑性に優れるが腐敗しやすく加工部が見えにくい特徴があります。
- ソリュブル – 油分が少なく半透明になり潤滑と冷却のバランスが良く幅広い用途に使えますが、潤滑性や清浄性が中間的な性質です。
- ソリューション – 油分をほとんど含まず水に完全に溶ける透明液で冷却性と洗浄性に優れ加工部も見やすいですが潤滑性が低いため重切削には不向きです。
テストの結果は…
- 加工品質:合格
- におい:問題なし
- 油煙:少ない
- ベタつき:なし
- 社員からのクレーム:ほぼゼロ
スモールスタートからのスケールアップでも問題なく、ようやく「理想の切削液」に出会えた瞬間でした。
導入とその後


唯一の課題は「価格」。相場の2倍以上(ほぼ3倍)でした。
しかし、社員の健康・工場環境・製品品質 を守れる唯一の選択肢だったため、導入を決断。
導入から数年が経った今でも、その切削液を継続使用しています。
工場の雰囲気は一変し、社員の手荒れも大幅に改善。
その後も外部からの依頼などで他製品を複数テストはしていますが、今のところは置き換わっていません。
まとめ
切削液の切り替えは、単なる「コスト」や「潤滑性能」の話ではありません。
- 社員の健康改善(手荒れ対策)
- 工場環境改善(油煙・臭い・ベタつきの解消)
- 製品品質の安定
これらを同時に達成するための、長く困難な挑戦でした。
今後も、ステンレス加工や金属加工の現場から、当社が取り組む活動をブログ形式で発信していきたいと思います。
